Artist's policy/アーティストとしての方針
エレクトロフォーミングで虫を扱っていて思うところがある。
虫は生き物だ。扱っているのは死体だ。
だから正直、虫を消費される商品として、映えるアクセサリーパーツのごとく扱われると気持ちが逆立つのだ。ふざけんなよ、と。
臭いからどうの、扱いにくいからどうのが先に来るならば。
だったら生き物を取り扱わなくて良い、と思う。
目立つ売れる商品を作るために虫を頑張るなんて私から言わせれば虫や生態系に失礼な行為でしかない。
そして冷静になる。
人間には大脳や感性があるが、それをどう使うかはその人次第。自分のように思えと言うのは他人をコントロールしようとする無駄な試みでしかない。
そこで、私のアーティストとしての方針をしっかりと表しておこうと思った。
私はこのような姿勢で取り組んでいる と公言することで
揺るがない自分への柱にしようと思う。
1.I don't kill in vain/無駄な殺生はしません
私の虫は殆どが日常の中で拾った死んだ虫である。それ以外には各種ブリーダーさんの死虫と廃棄される運命の古い標本を扱う。
自ら酢エチなどで標本用にシメることはない。
これは趣味で標本をつくる人を非難するものではなく
着飾るアクセサリーや自己表現であるアートのためにわざわざ自分が虫を殺す必要はないと考えての事だ。
綺麗だからと出自を確認せず購入することもない。
目を引きよく売れるからと乱獲、ブリードされる昆虫商売の一助を担いたくないからだ。
また、害虫を殺さないという事でもない。
人間も自らの健康や住環境を守るために他の生き物の侵入を防ぐ必要がある。ただ脊髄反射のように「きゃー」と殺すのではなく、上記のような営みの上に成り立つ行為だと認識の上で害虫を扱いたい。
2. As a funeral process/葬送のプロセスとして
私は彼らを標本にし銅化する時、ある種の葬送の儀式として、また循環する生命の一部である私たちと彼らとの対話としてリスペクトを持って作業をしている。
それは、生きていた者に思いを馳せる時間。
この翅で、この足で、この触角や目でどんなものを探し、食べ、繁殖をするのか。一つ一つ触る事で、その機能性や美しさ、逞しさに改めて気付かされる。
そしてこの小さな体から、大きな循環を感じる奇跡を毎回のように感謝する。
そんな葬送のプロセスを大切にしている。
虫が好きで生き物が好きで、曲がりなりにも専門的な勉強もしてきた身として
尊厳。
触れて感じる静かな時間を持つ事。
彼らへのリスペクトをもとに言葉を紡ぐ事。
それは、死体を扱うならば当たり前の事だと思っている。
今までもこれからも、このアーティスツポリシーを大切にして作品を作っていきたいと思う。
皆さま よろしくお願いちまつ。